ある暗い森の奥、伝説のポケモンを祀っているだとか、呪いが掛かっているだとか、
そんな噂の絶えない場所に、オードは来ていた。
その後ろには、サザンドラが着いてきている。
正直な事を言うと怖いのだが、とある依頼を受け、来ざるを得なかったのだ。
「サ・・・サザンドラ・・・大丈夫か・・・?」
サザンドラはギャアと楽しげに返事をする。
「・・・そっか・・・それは・・・何より・・・」
人選ならぬ、ポケモン選を間違えたな、と感じた。
「そろそろ祠が見えてくると思うんだけど・・・」
マップを開いたスマホ片手に呟く。
「あっ、あれか・・・・・・な・・・・・・」
祠は見つけた、が、その祠の前に黒い人影が見える。
「・・・・・・!!」
ゾゾゾっと背筋を冷たい何かが駆け抜ける。
そのタイミングでサザンドラが『人だ!』と大声を上げた。
「ちょっ・・・!おま、黙っ・・・!!」
「・・・オード?」
「・・・・・・はぇ?」
サザンドラの口を塞ぎわたわたとしていると、聞き覚えのある声で話し掛けられた。
ので視線を移すが、そこには身に覚えのない可憐な少女。
「・・・・・・・・ドチラサマデスカ」
「お前大丈夫かいな。俺や。」
俺・・・?しかし聞き覚えのあるコガネ弁。
もしかして・・・
「サ・・・サクマ・・・?」
「何をビビっとんねん」
「いやビビるだろ!?何でこんな所に・・・ってか何だその格好!?」
「落ち着きぃや・・・声でかいわ・・・」
サクマを見ると、綺麗な黒のワンピースに、揃いのカチューシャ、
中にはフリルブラウスという、いつもの彼には似つかわしくない、大変可愛らしい格好をしている。
「色々事情があんねん・・・」
「事情・・・・・・?」
目だけ右上を眺め、なにかを考える。
「・・・変な事考えとんちゃうやろな」
「べっ、別に・・・」
「ならええけど」
「・・・・・・あ。」
考えるついでに、悪い考えがオードの脳裏を過ぎる。
「何や」
「誰かに女装の事言われたくなかったらお願いついて来て」
オードが血相を変えて、顔を寄せ言う。
「俺は別に誰かに言われようが何やろうが・・・・・・」
言いかけて、サクマはオードの顔を見て何かを察した。
「・・・あー、せやなぁ、誰かに言われたら困るかもしれへんなぁ、これはしゃあないなー。」
やや棒読みだが、絆されてみる。
それ程真剣な目を、しかし縋るような目をしていたのだ。
「・・・!」
オードが顔を上げる
「で?どこ連れてく気ぃや?」
「サクマ!ありが・・・いや、懸命な判断だな!さあ着いてきてくれ!」
「何やねんそのキャラ」
人形のようにギッコンギッコンと歩くオードに、サクマは着いて行った。
To be continued. ⇒『ニア(2)』
Another story ⇒『for Near』 (※pixivにジャンプします)